概要:皮革研究部門

研究テーマ

硬タンパク質および関連生体高分子の構造と機能解析を基盤とした有用素材化技術、皮革等動物資源由来および関連物質の製造における新規利用に関する研究を行っている。

日本皮革技術協会の会長およびファンクショナルフィード学会の副会長を務めており、環境対応革に関連する事業、機能性素材の研究および啓蒙活動を行っている。また、関係大学、公設試および企業との共同研究を積極的に展開しており、光老化マウスや変形性関節症モデルマウスを用いた症状改善効果に関する研究、筋肉減少症モデルにおける筋肉量の改善に関する研究を実施している。

また、新規ヒアルロン酸の分析方法の確立や大脳皮質の発達における細胞外マトリックスの機能解析、食餌性ビタミンCの新たな生理機能:脳でのストレス応答における役割の解明に関する研究を行っている。

科研費基盤研究(B)「スキンテアを惹起する皮膚脆弱モデルの創出から革新的な予防・治癒促進ケア方法の確立」において、皮膚脆弱モデルマウスの確立に関する研究、科研費基盤研究(c)「食物由来プロテオグリカンは、動物由来プロテオグリカンを代替できるか?」の課題研究において、植物由来のプロテオグリカンの新たな精製方法を確立した。学術変革領域研究(A)「臨界期を決定するペリニューロナルネット成熟機構の解明」において、ペリニューロナルネット (PNN)におけるヒアルロン酸の役割を明らかにしている。

以下に、代表的な研究を示す。

  • 皮革関連事業

    経済産業省「環境対応革」事業に関連して、都立皮革技術センターおよび兵庫県工業試験所皮革指導所との共同研究を行い、皮革副産物利用に関する研究を行った。また、(株)ドクターウエルネス、旭陽化学工業(株)との共同研究でコラーゲンペプチドの機能解析を行った。研究成果の一部をファンクショナルフード学会で発表した。

  • 機能性食品や化粧品原料の効果・効能に関する研究

    機能性食品の効果・効能を明らかにする目的で、動物モデルや細胞を用いて評価した。(株)TFYとの共同研究において抽出エキスの光老化改善効果を明らかにした。また、三栄源エフ・エフ・アイ(株)との共同研究で光老化モデルの皮膚状態改善効果を示す機能性素材の探索を行った。

  • 運動器疾患における機能性食品の効果に関する研究

    (株)ファンシーとの共同研究において変形性関節症モデルを用いて機能性素材を評価した。変形性関節症改善効果を示す候補物質を新たに見出した。

  • デコリン形成異常症に関する研究

    エーロスダンロス症候群の患者由来の細胞を用いて、産生するデコリンの特性解析を行い、その成果の一部を論文投稿し収載された。

  • 新規ヒアルロン酸分析方法の確立とその応用

    特定の神経細胞周囲にはペリニューロナルネット (PNN) と呼ばれる特徴的な細胞外マトリクス構造が形成される。PNNはヒアルロン酸 (HA) とコンドロイチン硫酸プロテオグリカン (CSPG) の凝集体であり、神経可塑性の低下に関わる。HAはその分子サイズにより多彩な機能をもつため、組織サンプルから微量のHAを単離しその分子量を解析する手法を確立した。この方法を用いて、PNNを構成するHAは、可溶性のHAに比べて分子量が高いことが分かった。またHAを部分的に分解することでPNNの可溶性が上昇することが示された。

  • 大脳皮質の発達における細胞外マトリクス分子の機能解析

    胎生期に神経幹細胞から神経細胞が生まれた後、脳表層へ向かって移動することで大脳皮質が形成される。細胞移動や接着に細胞外マトリクスが関与することは知られているが、大脳皮質形成における機能は不明である。本研究では、主要な細胞外マトリクス分子であるヒアルロン酸 (HA) に着目し、神経細胞移動における機能の解明を目指した。マウス胎仔期の大脳皮質の細胞外マトリクスを解析した結果、中間帯において、HA、ニューロカン (NCAN) 、テネイシンC (TNC) が共局在することが分かった。HAを分解することにより、NCANとTNCの集積が減少することから、HA、NCAN、TNCはin vivoにおいて三者複合体を形成することが示された。NCANとTNCを二重欠損したマウスでは、野生型マウスに比べて、神経細胞の移動が遅れており、胎仔期の大脳皮質において、細胞外マトリクス分子の複合体形成が神経細胞の移動に必要であることが示された。

  • 食餌性ビタミンCの新たな生理機能:脳でのストレス応答における役割の解明

    本研究では、ヒトと同様にビタミンC合成酵素を欠損するODSラットを用い、2週間のビタミンC欠乏が脳の遺伝子発現に与える影響をRNA-Seq解析によって網羅的に調べた。ビタミンC欠乏によって発現が変動する遺伝子の多くは、核内グルココルチコイド受容体により発現制御を受ける遺伝子であることが、バイオインフォマティクス解析から示された。つまり、2週間のVC欠乏によりACTH非依存的に血中グルココルチコイド濃度が上昇し、その結果、下流遺伝子の発現が変動することが明らかとなった。過去の研究からVC欠乏による脳機能の低下には酸化ストレスが関与すると考えられていたが、本研究により脳の酸化ストレスだけでなく、グルココルチコイド応答の異常な活性化が脳機能低下に寄与する可能性が示唆された。

構成員

教授 野村 義宏(大学サイト内へリンク)
准教授 宮田 真路(大学サイト内へリンク)(独自HPへリンク)
博士3年
  • 石岡 樹成(社会人)
  • 大橋 啓吾(社会人)
  • 古川 智子
  • 佐藤 憲一(社会人)
博士1年
  • 武渕 明裕夢
    研究テーマ:神経系におけるプロテオグリカンの機能解析
  • 王 璐瑤
    研究テーマ:基原の異なるコラーゲン加水分解物の評価
  • Diana Egorova
    研究テーマ:脳の老化に伴う細胞外マトリックスの分解機構
修士2年
  • ​芦野 颯斗
    研究テーマ:組替え型プロテオグリカンを用いた細胞外マトリックスの可視化
  • 小島 菜月
    研究テーマ:ビタミンCの欠乏が脳機能に与える影響の解析
  • 堤 渚紗
    研究テーマ:抗酸化物質の高付加価値化に関する研究
  • 野澤優衣
    研究テーマ:神経細胞周囲の細胞外マトリックスの構造多様性の解析
  • 細川 茉佑子
    研究テーマ:コラーゲン加水分解物の機能解析
修士1年
  • ​井上 沙耶
    研究テーマ:老化皮膚(スキンテア)モデルの確立
  • 鶴田 敦子
    研究テーマ:脳発達に伴い変化するヒアルロン酸の性質
  • 冨田 梨央
    研究テーマ:タンパク質の質の評価
  • 橋本 康平
    研究テーマ:エーラス・ダンロス症候群の病態解析
  • 宮部 桃佳
    研究テーマ:グリコサミノグリカン鎖生合成の制御機構
  • 本島 百華
    研究テーマ:軟骨抽出物の運動器および肌質に対する機能評価
学部4年
  • 齋藤 千遥
    研究テーマ:プロテオグリカンの違いがペリニューロナルネットに与える影響
  • 中山 健太朗
    研究テーマ:神経活動依存的なペリニューロナルネット形成機構の解明
  • 野村 千咲子
    研究テーマ:植物プロテオグリカンの機能解析
  • 矢部 楓美佳
    研究テーマ:ビタミンCによる糖質コルチコイド合成の制御機構
  • 目次 愛実
    研究テーマ:テスラ放電による皮膚細胞への影響
  • 郭 閻榮旭
    研究テーマ:基原の異なるプロテオグリカンの構造的特徴